メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的としたストレスチェックの義務化を含む労働安全衛生法の
一部を改正する法律(注)が、平成26年6月25日に公布されました。
「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問票(選択回答) に労働者が記入し、それを集計・
分析することで、自分のストレス がどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。
「ストレスチェック制度はどうして従業員50人以上の事業場しか義務がないのですか?私の事業場は
50人を切るか切らないかの瀬戸際です、やらなければいけないのでしょうか?」といった問い合わせ
をいただくことが多くなってきました。
まず最初に、50人以上の事業場には①産業医や衛生管理者の選任、②衛生委員会の設置が義務付けら
れている事、③ストレスチェック制度は衛生委員会が実施計画の審議期間となり、④実施者は産業医
であることとなどを説明させていただきます。
これらが義務づけられていない状態でストレスチェックを実施することは難しいとの判断で、50人未満
の事業場は努力義務となりました。
ストレスチェック義務化の背景
脳・心疾患を上回る精神疾患による労災申請の増加が大きく関係しています。
厚生労働省:平成26年度「脳・心臓疾患と精神障害の労働補償状況」
ストレスチェック制度の目的
ストレスチェック制度の目的は3つあります。
①メンタルヘルス不調の一次予防
②労働者自身のストレスへの気づきを促す
③職場環境の改善
①メンタルヘルス不調の一次予防
第一回目でお伝えしたとおり、メンタルヘルス不調による労災請求・決定件数が増加傾向にあり、対策
が急がれます。不調者を発見し適切な対応を行う二次予防と、職場復帰の三次予防を中心に行ってきた
いままでの対応では十分ではなくなってきました。精神疾患は再罹患率も高く(職場復帰した2人に
1人が再休職)、一次予防による未然防止への対策が急務となりました。
ストレスに対する理解と、ストレス対策の知識とスキルを習得する事と、自分のストレス状態を自分で
チェックする事が大切になってきます。
ストレスに対する理解、ストレス対策の知識・スキル習得→メンタルヘルス研修
ストレスチェック →アプリでチェック「COCOLOLO」
『ストレスチェックに対する意識調査』
職場でプライベートな話をする人39.2%、仕事・職場が原因でストレスを感じている人50.4%、
その内係長クラスが37.2%で最も高く、経営者・主任クラス・課長クラスとなっています。
ストレスを抱えていることを会社や部署に「知ってほしい」46.2% 「知られたくない」30.7%
ストレスチェック義務化の名称を知っている人49.6%と半数に満たず、現時点では認知率は低いです。
詳細はこちらから
「ストレスチェック」に関するアンケート
調査期間:2015年3月25日~29日
回答者 :モニターの組織勤務者975人 「インターワイヤード調べ」
①年間自殺者の増加 (警視庁「自殺統計」、厚生労働省「人口動態統計」より)
2013年の自殺者数は27,283人で、3万人を下回りまりましたが、依然として高水準です。
働き盛り世代の死因の1位が自殺という現状があります。
②精神障害等の労災補償状況 (厚生労働省広報より)
請求・認定件数ともに高水準で推移しています。
平成26(2014)年の支給決定件数は497件で、過去最多となりました。
③労働安全衛生法に「質」の視点を
労働安全衛生法では、時間外労働(1か月あたり100時間を超える)という労働の「量」に
対する過重をアセスメントしています。これに加えメンタルヘルス不調には過重労働以外の
要因も考えられることから、労働の「質」に対するアセスメントを追加することが必要と
考えられています。
④総合的なメンタルヘルス対策の促進
メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業場の割合は増えているものの、依然として取組が
遅れている企業も多く、総合的なメンタルヘルス対策の促進が必要であると考えられています。
①~④までの背景により労働者の心理的な負担の程度を把握するため、医師、保健師等による検査
(ストレスチェック)の実施を事業者に義務付けました。
※従業員50人未満の事業場については当分の間、努力義務となりました。
(注)「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律82号)
改正ポイントは下記の6つです。
①化学物質管理のあり方の見直し
②ストレスチェック制度の創設
③受動喫煙防止対策の推進
④重大な労働災害を繰り返す企業への対応
⑤外国に立地する検査機関等への対応
⑥規制・届出の見直し等
上記で説明した通りストレスチェック制度の創立の背景は、精神障害に労災認定が3年連続で
過去最高を更新するなど増加傾向にあることです。主たる目的は労働者個人の「メンタルヘルス
不調の未然防止(一時予防)」です。
施行されて4カ月たちましたが、まだ準備段階といった企業が多いです。
②を除く改正ポイントも、もちろん取り組まなくてはならない課題です。